今もなお世界中で肥満者が増加傾向にあり、医療費増加などに繋がる深刻な社会問題となっています。
肥満は見た目の問題だけでなく、様々な病気のリスクを高めるため、健康的な生活を送る上で大きな課題です。そんな中、肥満の原因の一つとして、ここ数年で注目を一気に集め始めたのが”腸内細菌叢”です。
腸内細菌叢は、私達の腸内に住む数百種類、数兆個にも及ぶ細菌の集まりのことを指し、どんな細菌がどれくらい腸内に住みついているのかは一人一人違います。
昨今の腸内環境に関する研究では、この腸内細菌叢のバランスが崩れる「腸内毒素症(ディスバイオシス)」が、肥満、糖尿病、心臓病など、様々な病気の発症に関わっていることが明らかになってきました。
本日は、2022年10月に発表された学術論文「肥満における腸内細菌叢の重要な役割」の内容を参考に、腸内細菌と肥満の関係、そして具体的にどんなことをすれば肥満予防に繋がるのかについて解説していきます。
この論文では、肥満の人とそうでない人の腸内細菌叢を比較した様々な研究結果がまとめられています。多くの研究で、肥満の人では腸内細菌の多様性が低下し、"ファーミキューテス門"という種類の細菌が増加していることが共通して報告されています。
腸内細菌は、私達が食べたものを分解し、エネルギーに変換する役割を担っていますが、ファーミキューテス門の細菌は、このエネルギー変換効率が非常に高いと考えられています。その為、ファーミキューテス門の細菌が増えると、同じ量を食べても、より多くのエネルギーが吸収され、肥満につながりやすくなる可能性が示唆されています。
また、腸内細菌叢の乱れは、食欲をコントロールするホルモンや、脂肪の蓄積に関わる物質の分泌にも影響を与えていることがわかってきました。
以上のことからも腸内細菌叢のバランスを整えることは、肥満の予防や解消だけでなく、健康的な生活を送る上で効果的な方法だと言えます。
※因みに、巷ではこのファーミキューテス門の細菌をデブ菌と言う風にネガティブな表現で紹介されたりもしますが、 決して不要な細菌ではなく、私達の健康には欠かせない役割も担っています。あくまでもバランスの問題です。
では、腸内細菌叢のバランスを整えるにはどうすればよいのか?
まず最初に取り組むべきは、皆さんお察しの通り、食事内容の見直しです。
普段どんなものを食べるかは腸内細菌叢に大きな影響を与えます。
そして、食事の見直しの際に必ず取り組むべきことが、腸内細菌のエサとなるプレバイオティクス(食物繊維やオリゴ糖など)を意識的に摂り入れることです。
プレバイオティクスの代表格食物繊維と聞くと、水溶性食物繊維や不溶性食物繊維の両方を摂取すればいいでしょ!と認識されている方も多いかと思いますが、最近は水溶性、不溶性といった区別ではなく、発酵性の高い食物繊維かどうかがポイントで、いわゆる発酵性食物繊維が含まれた食品を積極的に摂取した方が良いといった見解が強くなってきています。
理由は、発酵性食物繊維が腸内に取り込まれると、一部の腸内細菌がそれを元に短鎖脂肪酸という私達の健康にとても有効的な物質を産生するからです。
短鎖脂肪酸は、腸のバリア機能の強化、免疫系を強化、腸のぜん動運動の促進、代謝の調整(肥満予防)などといった効果をもたらしてくれます。
そんな発酵性食物繊維が多く含まれる食品は、大麦、オートミール、玄米、小麦全粒粉などの穀類やワカメ、昆布、ヒジキなどの海藻類が代表的です。
体作りの一環としてぜひこれらの食品を積極的に取り入れてみましょう。
腸内細菌叢は、まだまだ解明されていない部分も多いですが、近年では、健康な人の腸内細菌を移植する「糞便マイクロバイオータ移植」といった新たな治療法も開発されてきており、今後の研究によって、より効果的な予防法が確立されることが期待できますね。
※参照・引用 Cheng Z, Zhang L, Yang L, Chu H. The critical role of gut microbiota in obesity. Front Endocrinol. 2022;13:1025706. doi: 10.3389/fendo.2022.1025706.
※各画像は、ImageFX(AI)にて作成しています
/
挑戦を思い出す場所
\
BRAVE FITNESS GYM 覚王山
名古屋市千種区穂波町3丁目29−1
エトワールMI 101
Comments