「百薬の長」と言われていたお酒…でも現在は…?
「お酒は百薬の長」という言葉、誰もが一度は聞いたことがあると思います。適量のお酒は健康に良い!なんて言われていた時代もありましたが、近年の研究では、その考え方が完全に覆されつつあります。
2018年、世界的に権威のある医学雑誌「ランセット」に掲載された論文によると、「健康への影響を考えれば、アルコールの摂取量はゼロが良い」という結論が示されました。
この研究は、世界195の国と地域で行われた592の研究データと、2800万人を超える人を対象とした非常に大規模で信頼性の高いものです。
結果として、適量の飲酒であっても様々な病気リスクを高めることが明らかになったのです。
さらに、アルコールが体内で分解される過程で生成されるアセトアルデヒドは、国際がん研究機関(IARC)の発がん性リスク評価において、 グループ1(最も発がん性が高い) に分類されています。
IARCとは、世界保健機関(WHO)の専門機関で、世の中の様々な物質の発がん性リスクを分析し評価しており、グループ1にはその他タバコ、ヒ素、X線など、誰もが危険性を認識している物質が名を連ねています。アセトアルデヒドが、これらと同じグループに分類されているという事実を知っておくことは重要です。
以前は、”心筋梗塞のリスクだけは少量の飲酒で低下する”とも言われていましたが、最近の研究でその説も疑問視されています。 つまり、お酒は百薬の長どころか、適量でも健康リスクを高める可能性が十分にあると言えるのです。
アルコールのリスクを深掘り!アセトアルデヒドの影響とは?
では、アルコールが体内に取り込まれると具体的にどんなことが起こり、どんな影響があるのでしょうか?専門用語を覚える必要はありませんが、体内でどのように処理されるのかイメージしてみましょう。
お酒を飲むと、体内でエタノール(飲料用アルコールの主成分)がアセトアルデヒドに分解され、さらにそこから酢酸に分解されます。
この分解の途中で生成されるアセトアルデヒドこそが、多くの悪影響を引き起こす原因物質です。アセトアルデヒドは、二日酔いの原因物質としても知られています。頭痛、吐き気、倦怠感といった辛い思いをした経験は誰にでもあるのではないでしょうか。それは、アセトアルデヒドが体内に残っているために起こるのです。
さらに、アセトアルデヒドが慢性的に体内に蓄積されると、以下のようなリスクが高まります。
① 発がんリスクの増加:食道がん、胃がん、大腸がんなど
② 肝臓への負担:脂肪肝、肝硬変など
③ 動脈硬化:血管を傷つけ、動脈硬化を促進
④ 脳への影響:記憶力や集中力の低下
40代に突入すると、筋肉だけではなく内臓機能も徐々に低下し始めます。
肝臓の機能も例外ではなく、アルコールの分解能力も衰えてきます。
そのため、40代というのはお酒との付き合い方を見直す絶好のタイミングでもあると言えます。
アルコール対策に必要な体の豆知識
とはいえ、お酒が飲みたくなる気持ちもわかりますし、実際にお酒が必要な場面もあるかと思います。飲酒はストレスを軽減したり、食欲を増進させたり、人とのコミュニケーションを円滑にしたりといった面もあり、ビジネスの場では、お酒が重要な役割を果たすこともあります。ですので、お酒を完全にやめることを強制するつもりはありません。
そこで、まずはお酒と賢く付き合える大人として、お酒に関する体の知識をもう少し深めてみましょう。
アルコールは、皆さんご存知の通り主に肝臓で分解されます。
① エタノール(飲料用アルコールの主成分)が アルコール脱水素酵素(ADH) によってアセトアルデヒドに分解されます。
② アセトアルデヒドは アルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって酢酸に分解されます。
③ 酢酸は、さらに分解されてエネルギーとして利用されます。
ADHやALDHは、酵素と呼ばれるタンパク質の一種です。酵素は、体内で起こる化学反応(分解など)をスムーズに進めるための触媒のような役割を果たしています。
つまり、アルコールのリスクを減らすには可能な限り素早くアルコールを分解し無毒化できるかが鍵となるわけです。この点を踏まえて、最適なアルコール対策を考えていきましょう。
40代からのアルコール対策|おつまみ選びでリスクを軽減!
お酒のリスクを最小限に抑える最善策は、やはり飲酒量を控えるもしくは断つことです。
しかし、それができるなら最初から苦労しないというのが本音かと思います。
そこでアルコール対策として、 アルコールの分解をサポートする栄養素を多く含む食材を、おつまみとして積極的に取り入れていくのはいかがでしょうか?
下記のリストはアルコールの分解をサポートする栄養素を含んだ食材の一覧表です。
ぜひ一度体内で起こっているアルコール分解をイメージしながら食べてみてください。
いつも一緒にお酒を飲む仲間に知識の共有をしながらお酒の席を楽しむのもおススメです。
*ADH=アルコール脱水素酵素 ALDH=アルデヒド脱水素酵素
*フリーラジカルは、簡単に言うと、体内で発生する「さび」のようなもので、細胞を傷つけ、老化や病気の原因になることがあります
*特定の食材だけを食べ続けることは避けましょう。食事(おつまみ)の大前提は栄養バランスがとれていることです
まとめ|お酒を嗜む大人に必要なこと
お酒を完全に断つのが、健康を維持するための最善策ではあります。
しかし、「どうしてもお酒がやめられない」「ビジネス上、お酒が必要不可欠」という方もいるでしょう。そんな時は、今回紹介した食材をおつまみとして積極的に摂取し、お酒による体への悪影響を最小限に抑えましょう。
特に、お酒が弱いと感じる方は注意が必要です。お酒が弱いというのは、アセトアルデヒドを分解する酵素 ALDH(アルデヒド脱水素酵素) の働きが生まれつき弱いことを意味します。 ALDHの働きが弱いと、アセトアルデヒドが体内に蓄積しやすく、顔が赤くなる、動悸がする、吐き気がするなどの不快な症状が出やすくなります。もちろんアルコールが起因となる病気のリスクも高まります。
このような方は、少量の飲酒でも悪影響が出やすい可能性があるので、より一層、お酒との付き合い方を真剣に見直すようにしましょう。
40代からの健康は、毎日の積み重ねによって作られます。
お酒との付き合い方を考え、健康的なライフスタイルを送り、いつまでも健やかにやりたいことができる体でいましょう!
おまけ|お酒の適正量とは?
よく聞く”適量のお酒”とは具体的にどれくらいの量なのか?実際の所この質問に答えられる人は少ないです。お酒に弱いなどその人の体質により適正量にはバラツキがありますが、アルコール量という観点でおおよその目安を示すことはできます。
アルコールの適正な摂取量の目安は、男性で1日40g、女性で1日20gまでです。
1回の飲酒の機会で、アルコール量が50gを超えると、下痢になるリスクが高まります。 1週間単位で考える場合は男性120g、女性60gまでに抑えましょう。
このアルコール量が実際にどれくらいの量になるのかは下の表で確認してください。
例えば、生中1杯(500ml)でアルコール量はおおよそ22gとなる為、男性は1日2杯まで、女性では1日1杯までが適量となります。
これを聞いて少なすぎる!と感じる方は多いと思いますが、”適量のお酒”というのはこれくらいになります。参考にしながらお酒にのまれることなく賢く付き合っていきましょう。
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